DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
さよ子の後ろ姿は動いていなかった。
その向こう側の地面には、今しがた付いたばっかりのタイヤの跡が黒々と踊り回っている。
もとが何だったのかわからないパーツの破片が散らばっている。
三日月刀《シミター》は、めちゃくちゃに酷使されてもまだ機能を失ってないらしい。
淡く発光して、すぐ隣に停車した四駆を照らしている。
海牙は三日月刀《シミター》からちょっと離れた場所に落っこちていた。
あり得ない方向に首や手足を曲げた格好で、微動だにしない。
そっか、あいつも人間だったのか。やっぱ死ぬんだ。
そんなことを思って、おれはちょっと笑いたくなった。
顔を見てやりたくなった。
煥と同じくらいキレイな死に顔してんじゃないかって気がした。
煙が流れてきた。
目と鼻と喉を刺された。おれは咳き込んだ。
まるでその咳が合図だったみたいに、急に、さよ子が動いた。
おれのほうを振り向いた。
期待も希望も、その瞬間に打ち砕かれた。
ジ・エンドだ。