DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


唐突に、おれは呼ばれた。



「理仁! 本当に戻ってきたんだな」



透明人間ごっこ中のおれを、難なく発見したそいつ。


親友って呼ばせてもらってる、同い年の気楽な相手だ。



おれは笑顔をこしらえて振り返った。



「文徳~! 久しぶり! 戻ってきたよ~。で、予告してたとおり、軽音部室に遊びに行こうかと思ってね」



栗色の髪、長身、切れ長な目のイケメン。


生徒会長サマで成績優秀、スポーツ万能。


ロックバンドのリーダーで、バンドを慕って寄ってくる不良どもまで取りまとめる。



伊呂波《いろは》文徳。


意味不明なほどハイスペックなくせに、すっげーいいやつだ。



文徳はギターを肩に引っ掛けて、軽音部室に向かう途中だった。


おれは文徳の隣に並んで、一緒に歩き出す。


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