DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
そんなふうだったから、どこ走ってんのかを確認する余裕もなくて、まわりの風景なんか全然わからなかった。
走り出す前に確認した地図から言って、大した長距離でも長時間でもなかったはずだ。
いつの間にか、デカい屋敷の城壁みたいな塀が目の前にあった。
巨大な門まで速度を緩めず突っ走っていって、おれたち初めてブレーキをかけた。
広大な敷地を持つ豪邸だった。
幾何学的で整然とした前庭は、ヨーロッパの宮殿のそれみたいな感じで、花壇と泉があって低木はこざっぱりと剪定されていて、全体的に視界が利く。
奥まったところに建つ屋敷は、和モダンの質素なデザインで、天井の高い平屋造りだ。