DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
汗びっしょりの海牙が守衛に声を掛ける。
正規の駐車場ではなく、すぐにも出立できるよう、バイクを門の近くに置きたい。
そういう交渉をしていたら、並外れて大きな黒い犬が颯爽《さっそう》と近付いてきた。
その黒い犬、ほんと颯爽とした感じで。
あっ、こいつすげー賢いやつだなって、見てすぐ感じた。
でも、犬種がわからない。ミックスでここまでデカくなるっけ?
犬は、海牙と守衛に言った。
「バイクなら、ここに置いていってかまわねぇぞ。ちゃんと管理しておくから」
しゃべった。
ごく当たり前の顔をして、犬の姿で人間と同じように、しゃべった。
大人の男の声だ。
「うそー? マジでー?」
おれが思わず正直すぎるリアクションをしたら、
海牙は、愕然として固まった一行を見渡して、肩をすくめた。