DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


汗びっしょりの海牙が守衛に声を掛ける。


正規の駐車場ではなく、すぐにも出立できるよう、バイクを門の近くに置きたい。


そういう交渉をしていたら、並外れて大きな黒い犬が颯爽《さっそう》と近付いてきた。



その黒い犬、ほんと颯爽とした感じで。


あっ、こいつすげー賢いやつだなって、見てすぐ感じた。


でも、犬種がわからない。ミックスでここまでデカくなるっけ?



犬は、海牙と守衛に言った。



「バイクなら、ここに置いていってかまわねぇぞ。ちゃんと管理しておくから」



しゃべった。



ごく当たり前の顔をして、犬の姿で人間と同じように、しゃべった。


大人の男の声だ。



「うそー? マジでー?」



おれが思わず正直すぎるリアクションをしたら、


海牙は、愕然として固まった一行を見渡して、肩をすくめた。


< 257 / 405 >

この作品をシェア

pagetop