DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
姉貴はチラッと戦闘要員に視線を寄越すと、またまっすぐに親父をにらんだ。
「見覚えのない人がずいぶん増えたみたいね。昔からうちにいる人だったら、家族も含めてみんな顔がわかるけど」
親父は姉貴に応えなかった。
姉貴のほうを向いてはいても、視線が姉貴を素通りしている。
「宝珠は持ってきたか?」
おれの胸の上で朱獣珠が震えた。
玄獣珠、白獣珠、青獣珠が呼応して、悲鳴みたいなトーンで共振した。
沈黙が落ちる。
おれの背中に視線が集まるのを感じる。
おれは部屋を見渡した。
猫脚のソファ、傘立て、印象派の模写、さよ子がちょうど映る位置の鏡と防犯カメラ。
壁際の小さなテーブルにはノートパソコンがあって、さよ子から見える角度の画面に表示された画像が最低に悪趣味だ。