DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
文徳がアイスコーヒーのグラスに口を付けたから、おれは喉の渇きを思い出した。
シロップを入れすぎたアイスコーヒーは、香りもなければ冷えてもいなくて、ベタベタする。
海牙は、かなりミルクの色に近いアイスコーヒーを一口飲んで、いつになく緊張した顔をした。
「長江さんとお話ししておきたいと言い出したの、ぼくなんです。ぼくが文徳くんに相談して、二人で会いに行くことになりました」
「そーなんだ? 文徳のお節介じゃなかったんだ」
「お節介ではなくて、ぼくの感覚では情報収集ですね。敵情視察ともいうかな。リアさんの役に立てないかなと思って。
リアさんがつらそうなとき、ありますよね。仕事も忙しいんでしょうけど、やっぱりストレスの最大の要因は長江さんの件だろうから」
姉貴は海牙のことを妙にかわいがっている。
海牙のウェーブした黒髪は、十日に一度は姉貴がハサミを入れていて、素材がいいだけに海牙は急激に垢抜けた。