DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
おれらは、何か買い食いしようかってノリだったからコンビニに入った。
おれは自分用のチョコレート菓子と犬用の白いおにぎりを買った。
店から出て、自分のより先におにぎりの袋を開けて、犬のほうを向いてしゃがんで、冴え冴えとした色の目をじっと見る。
【ほら、食えよ。いじめねーから、こっち来い】
ぱさぱさのしっぽが、ぽすん、ぽすんと間抜けなリズムで気だるげに揺れた。
それから、犬は素直におれに従った。
【おすわり。おっ、やっぱできるじゃん。がっつかずに食えよ。ほら、食え】
犬は、すんすんとおれの手の匂いを嗅いで、おにぎりを鼻先でつついて、しっぽをゆっくり振って食事を始めた。
文徳がサンドウィッチをぱくつきながら、感心した声を上げた。
「この野良が人に寄ってくるところ、初めて見たぞ。こいつ、ここ二ヶ月くらい、近所をうろうろしてるんだけど」
「そーなんだ? プライド高くて素直じゃないとこがあるんだろね。根っこのとこでは、人恋しくてたまらないっぽいけど。
じゃなきゃ、おれの号令《コマンド》に素直に反応しねぇだろうし」