DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―


「理仁のチカラは動物にも通用するんだな」


「言ったことなかったっけ? でも、動物は、言葉が通じる通じないの個体差がすっげー激しいよ。

おれの号令《コマンド》って、受け取る側が日本語を話してようがフランス語を話してようが関係ないんだけど、やっぱ、人間が想定する範囲の言語でしかないんだよね」


「イルカは超音波を使って会話してるというけど、あれは人間が想定できないタイプの言語?」


「たぶんね。少なくとも、水族館のイルカは全然、おれの号令《コマンド》に従ってくれなかった。ジャンプしろとか言ってみたんだけど。

イルカのショーってさ、言語的な指示で何かやらせてるわけじゃないんでしょ? おれの得意分野じゃねーんだゎ」



おにぎりを食い終わった犬が、後足の角度がそろった行儀のいいおすわりで、ぱたぱたとしっぽを振った。


おれが犬の頭のほうに手を伸ばすと、自分から迎えに行くような格好で、犬はなでなでを喜んでいる。


< 63 / 405 >

この作品をシェア

pagetop