DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
煥の少し長めの銀髪は、鈴蘭が撫で続けるからサラサラだった。
髪にも肌にも、血や泥の汚れがない。
鈴蘭が拭ってやったんだろう。
生首のくせに、表情が妙に生き生きしている。
ハッと目を見張ろうとする途中みたいな、どこか無防備な表情。
煥って、つねに眉間にしわを寄せてそっぽを向いてるようなやつだったから、毒気や棘《とげ》のない表情すると全然違うんだな、って感じだ。
頬とか口元とか実はあどけないんだな、って。
まつげがめっちゃ長いんだな、って。
鈴蘭がくすくすと笑った。血で濡れた胸が揺れた。
「見惚れちゃいますよね。キレイですもんね。でも、あげませんよ。わたしのものですから。
ちょっと想像できなかった形だけど、手に入っちゃった。嬉しいなあ。早く外に出て、キレイなまま保存できる方法を探さなきゃ」