DISTOPIA EMPEROR―絶対王者は破滅を命ず―
鈴蘭は煥の生首を持ち替えて、光のない目と見つめ合うと、額の白い胞珠と唇にキスをした。
少し開いたままの煥の唇に、鈴蘭の舌が這う。
生首がもう硬直しているのが見て取れた。
すげーな。おれにはそんな発想、なかったよ。
空っぽになって腐ってくだけの死体なんて、もう姉貴じゃないと思った。
おれは、鈴蘭が来たのとは別の方向を指差した。
「とにかく、どっかから外に出ようと思ってんだけど、一緒に来る?」
「行きます。たぶんなんですけど、この中、ほかにも誰かいるんですよね。不気味な声が聞こえたりしてるので」
「そーなんだ。まあ、このダンジョン、けっこう広範囲に広がってるし、巻き込まれた人がいてもおかしくはないよね。あの海牙ってやつも、たぶんどっかにいるし」
「はい。だから、一人より二人のほうが安心だと思って」
だよね。おれもそう思うよ。
二人のほうが、生きて出られる確率が上がるよね。