大好きな先輩は隠れ御曹司でした

「公表するのがイヤになったんじゃないか」から派生して「実はもう別れたいんじゃないか」まで、思考は悪い方に一直線に転がっていく。

そんな数日を過ごした上での今日なのだ。だからといってミスが許される訳ではないけれど……。

今も思考の降下は止められないけれど、光希は社会人で今は勤務時間だ。

深いため息を吐きながらも、これ以上静香さんに呆れられたくないとファイル整理に精を出そうと決めて、資料室の扉を開けた。



⌘ ⌘ ⌘



「……」

資料室の一番奥、視線資産管理課のスペースでファイル整理に没頭していた光希の耳に扉を開く気配と誰かの話し声が聞こえて来た。

初めは他の部署の誰かが資料を取りに来たのだろうと考えて作業に戻ろうとしたが、聞こえてきた声が会話なのに気付いてはっと手を止めた。