傷だらけの君は
目の前のうどんから、もうもうと湯気が立っている。
顔が隠れんばかりの勢いの湯気を浴びながらあたしは隣を見た。
土方さんがすすっているのはしっぽくうどん。
あたしのと同じぐらい湯気出てるけど、なんで平気なんだろう。
ちなみにあたしのはたぬきうどん。
そしてここは土方さんが馴染みにしているお店らしい。
......問題は、あたしは今、外に出ているということ。
蔵を出た土方さんは案外するりと屯所の門をくぐった。
ほんとにもう、ちょっと昼でも食べに行くかぐらいの勢いで。
いや、本当にお昼を食べに来たんだけど。
いきなりのことに驚いて立ち止まろうとしたあたしをぐいっと引っ張ってたどり着いたのがこのお店。
「いつもの」で土方さんのしっぽくうどんが出てきて、あたしはなぜかたぬきうどんを頼まれた。
顔がたぬきみたいだから?
※ 実際にたぬきうどんが世に広まり始めたのは大正時代です。物語の都合上、拙作では紅ちゃんに提供させていただきました。ご了承ください。