傷だらけの君は


その願いが叶うことはなくて、あたしはいま暗闇の中にいる。


視界が失われたのは二日前。


正確には一時的に視覚を失っているだけだから、もう少しすれば見えるようになる。


......はず。



「......ちょっと、怖いなぁ」


今までも同じようなことはあったけど、全盲になることはなかったから。


一筋の光も見えない真っ暗な世界は、今が朝であることですら忘れてしまうほどで。


布団のこすれる音にさえ敏感に反応してしまう。



「紅、入るよ」


無の世界に入ってきたのは、もはや聞き慣れた沖田さんの声だった。


そのあと襖が開けられる音がして、足音が近づいてくる。



「まだなにも見えない?」


「はい......ずっと真っ暗です」


まるで闇のなかにいるみたい。


そう言うと沖田さんはそっか、とあたしの髪の毛を手で梳いてくれた。



「無理ばっかりして、君は死にたいの?」


< 159 / 253 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop