傷だらけの君は














「はあっ……はあ、」


見えてきた。あれが”池田屋”


山崎さんが書いてくれた地図は、簡易なものだけどすぐに分かった。


店からは光が漏れていて、真っ暗な町では異質の存在感を放っている。


雨が降っていた。雨のせいで視界が悪く、足がもつれそうだ。


だけど止まれない。止まるわけにはいかなかった。




『沖田くんが向かったのは池田屋や。きっともう始まってる』


『あーあ、わい土方さんに斬られるなぁ絶対』


そう言って笑った山崎さんは、あたしの背中を押してくれて。



『さっきの言葉、直接本人に伝えてやりな』




「あっ」


ぬかるんだ地面に足をとられて派手に転んでしまう。


もう少しなのに、はやく。はやく。


あたしは立ち上がった。店の前までたどり着いて、一呼吸おいてその戸口を開ける。


< 178 / 253 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop