傷だらけの君は
「紅さんもう大丈夫なの?」
「はい。ご迷惑をおかけしてすみません」
藤堂さんは、布団をたたみ身支度を整えていたあたしをまじまじと眺めていた。
「それってさ、紅さんの口癖?」
「え?」
聞き返すけど藤堂さんはううん、と笑みを浮かべた。
「なんでもないや。もう会うこともないだろうし……あ、この音は」
地響きのような音がだんだんと近づいてきて、部屋の仕切りが放たれた。
その正体は目と鼻からいろいろ出ている永倉さんで、あたしの姿を見つけるなり思いっきり抱きつかれる。
「うっ」
「うぉぉ……!ごめんなぁぁ紅ぃぃ!」
「気にしないでください」
耳にタコができるくらい聞いたその言葉は、どれだけ聞いても慣れることはなかった。
どうやら永倉さんはかなり責任を感じていたらしく、沖田さんと同じく熱が下がらないあたしの様子をたびたび見に来てくれていた。
そういえばここって、誰かの部屋だったのかな。
物は少ないけど、文机にたんす。
無造作に脱ぎ捨てられた浅葱色の羽織。
寝込んでいるときは気が回らなかったけど、明らかに誰かが生活しているようすだった。
それなのにあたしが使っている数日間、この部屋の住人が帰ってくることはなかった。
……その人にも迷惑をかけてしまったな。