Silver Night-シルバーナイト-
「じゃあ行って来るから、梓は莉愛を守っててね!!」
私へと手を振りながら佑衣が視線を向けるのは、私の隣でただ立たずんでいる梓へのモノ。
それに対しての梓の返事は特になくて、あの混雑へと向かって行く三人を見送った。
「梓は行かなくて良かったの?」
そう言いながら隣を見上げれば、梓はその切れ長な瞳に私を映し出す。
「あぁ」
「行けば良いのに、私待ってるし」
「人混み、嫌いなんだよ」
あぁ、だからなのかもしれない。
だから皆んな梓が通る時少しばかりの空間を作り道を開けるのが暗黙の了解なのかもしれない。
まぁ、それだけではないんだろうけど。
梓には簡単に近づいてはいけないような帝王的オーラがある。
もうすぐ始まるであろうステージの方を見てそんな事を考えていると、
「それかせよ、持つ」
梓の言うソレとは、私が持っている大量の食べ物達。
「大丈夫だよ。重くないし」
「食えねェだろ」
「え?どれか食べたいの?」
「違げェよ、そんだけ持ってたらお前食べずらいだろうが」