Silver Night-シルバーナイト-



颯達のバンドは思っていたよりもずっと迫力があって本格的で、初めての体験に未だ胸がドクドクと音を上げている。




「すごかった…」



演奏を終えお客さん達に手を振る笑顔の彼らを見ながら拍手を送ると、隣の梓が「楽しいか?」とどこか嬉しそうに聞いてきて「うん!」と私にしては大きな声を出すと目を細めて笑った。




その笑顔を見た瞬間、先程までとは違うドキドキが私の胸を襲ってくる。




それはどこか温かいような…胸にジワっと何かが広がる感覚。




多分、この時の私ならまだ戻れた。




この気持ちを消す事も出来た。




今まで通り一人に戻る事だって出来たと思う。





けど、だけど……

この時の私はあまりに無知で…




こんな感情を自分が持つなんて、思いもしなかったんだ。




< 110 / 365 >

この作品をシェア

pagetop