Silver Night-シルバーナイト-
一体何が起きているのか、正直私には理解なんて出来なかったけれど…少しばかりの恐怖は感じた。
あれだけ誰かに睨まれたのは初めてだったと思うから。まぁ、私が睨まれていたわけじゃないんだけど。
「黒雅だ」
「え?」
「アイツら黒雅のメンバーだ」
隣にいた琉聖が物凄く大きな舌打ちを落として、そう低く呟いた。
黒雅……
「大丈夫なの?」
「別に、何処でもかんでも手出してくるほどあっちも馬鹿じゃねェよ」
「そっか…」
さっきまでの楽しかったはずの雰囲気が、一気に険悪なムードに変わってしまって。
それは梓の家に着くまで続いた。
「莉愛、ここが梓の家だよー」
いつか見たあのオシャレマンション。
佑衣にそう紹介され、一度来たことあるんだけどな…と思いながらも梓を見上げると、彼は特に何の反応も見せないもんだから、初めて来たフリをする事にした。
きっと梓はあの日の事を誰にも言っていない。
それは私も同じで…特に彼がそれを誰かに言いふらすとも思えないけれど、もしかしたら私の事を思って黙っててくれているのかと思ったら、何だか少し胸がギュッとしてくる。