Silver Night-シルバーナイト-



あの時と同じようにエレベーターに乗り込み、そして同じように廊下を歩く。




あの時と違うのは、今日は二人じゃなくて5人ってこと。




廊下の角を曲がり梓の家のドアが見えた時、一番前を歩いていた琉聖がいきなり立ち止まったせいで、勢いよくその背中に私がぶつかる。




「痛っ」




ぶつかった鼻を擦りながら琉聖を見ると、その視線は真っ直ぐと前に向けられていて…私もゆっくりとその先を見つめる。






私の視界に入り込んだのは……





一人の女の人。




いや、女の子か……。





私達と同じ歳くらいの女性がそこにはいた。




薄い桜色のワンピースに、ゆるりと綺麗に巻かれた柔らかそうな髪。




透き通るくらいの白い肌に、華奢な身体つき。




「朱音(アカネ)…」




それは背後から聞こえてきた梓の声。



その声を聞いた瞬間、



いや…正しくは梓が彼女の名前を呼んだ瞬間、私の心臓が驚くほど大きな音を出した。




「…梓」




梓の声が聞こえたのか、ゆっくりとこちらを振り返った彼女と私達の視線がぶつかり合う。




梓の知り合い……



それはそうか、ここは梓の家だ。
しかもあそこは梓の部屋の前。



彼の知り合いに決まっているのに……




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