Silver Night-シルバーナイト-
私達を追い越して、女性の前に行った梓は彼女を見下ろし少しばかり眉を下げる。
「どうした」
それは聞いた事もないほど優しい梓の声。
胸が軋む。
ギリギリと音を立てて何かがつまっているみたいに胸が痛い。
一体何が起きているのか。
あの人は誰なのか…
普通にしているはずなのに、無性に息が苦しくて…力強く拳を握りしめた。
「会いたくなって…」
彼女の声は、繊細でか細くて今にも壊れそうで…まるでガラスみたいに綺麗。
二人は恋人なんだろうか…でも梓に彼女がいるなんて事は一度だって聞いた事もない。
そもそも毎日倉庫にいるんだ、彼女がいたらきっと倉庫に連れて来るか、毎日あそこにいる暇なんてないはず。
だけどそこで思いだす。
時々鳴る梓の携帯。
それに合わせるようにして倉庫を後にする彼の姿。
「俺達帰ろうか?」
気を利かせたのか、この何とも言えない雰囲気の中声を出したのはいつもよりトーンの低い悠真の声。
その声に反応したのか、梓を見ていた彼女がゆっくりと私達の方へ顔を向ける。
一言で言うと『可愛らしい』そんな人。
彼女は声を出した悠真を見て、その後一番先頭にいる琉聖…そして私を視界の中へと入れる。