Silver Night-シルバーナイト-
朱音と呼ばれるその子はすすり泣くようにして肩を震わせ、そしてそれを梓が優しく抱きしめていた……。
神様は意地悪だ。
どうしてこのタイミングでこんな場面を目撃しないとならなんだろうか。
これ以上私にどうしろと言うんだろう。
どうして欲しいんだろう。
「なぁ莉愛、お前 俺に助けてって言ったよな」
「…うん」
「だから俺は、お前を前に進ませる事にする」
「え?それってどういう…」
私がそう言い切る前に、琉聖は前を見たままそう力強く言うと私の肩を抱き寄せて早足で歩き始めた。
だから私は知らない。さっき琉聖が一体どんな顔で私を見つめていたかなんて……。
……知らなかったんだ。
きっと周りのみんなは、梓達の方を見ているから私達がいる事にまだ気が付いていない。
コツコツと二人分の足音だけがそっちへと近づいていき、私は困惑したまま琉聖を見上げる事しか出来なかった。
そんな私達に気が付いたらしい一番後ろにいたメンバー達が、次々と道を開くとようにしてサイドへと避けて行く。
複数のメンバー達の表情は、何処か曇っていて困惑しているようにも見える。だってそれは、きっと…琉聖がいつもとは違い冷たく前を見据えているから。
目を伏せるようにして、前だけを見つめていたから。