Silver Night-シルバーナイト-
波が引くようにして作られた道を通り、梓とあの子の前で足を止めた琉聖。もちろん肩を抱かれている私もそこで止まるわけで……
「おい、梓」
低く良く響いた声が倉庫内に反響して、慌ただしく駆け回っていた他のメンバー達も何事かと動きをピタリと止める。
琉聖の声に、あの子をさすっていた梓の手がそっと止まりそしてゆっくりとこちらを視界へと入れた。
梓の視線は…琉聖をみて、そして次に私に移る。だけどそれはまたすぐに琉聖へと戻され冷静に影を落とした。
「これがお前の出した答えっていう事か」
琉聖に抱かれた肩から熱いほどの熱が伝わる。
怖いくらいにピリピリとした空気がその場を包み込みそして拡散されていく。
「なら、隣は俺が貰っても良いよな」
そう言った琉聖を、梓が強く睨み付ける。
「いや、貰っても良いよななんて曖昧な事は言わねェよ。俺が貰う」
琉聖の言葉の意味は主語のない言葉ばかりで、ハッキリ言って良く分からない。
だけど言われている当の本人の梓は分かっているようで、冷静に琉聖を睨み付けると、そのまま口を開く事は無かった。