Silver Night-シルバーナイト-
「お前を怒らせたくないからな。ちゃんと言っとくよ」
口角を上げ、目を細めて梓に笑みを見せた琉聖は「莉愛、行くぞ」と言ってそのまま私の肩を寄せると部屋へと繋がる階段を登り始めた。
部屋へと入り扉が閉まった瞬間、私の肩から腕をそっと離した琉聖。
「大丈夫か?」
「うん…でも梓凄い怒ってたけど…」
「あぁ、そうだな」
「そうだなって…良いの?」
「良いんだよ。分かってて怒らせたから」
「分かってて?」
「まぁその話はまた今度。俺は今から黒雅探しの加勢に行かねェと。お前はここで大人しく待ってろ、そのうち悠真が帰って来る」
「うん…分かった」
「一人で大丈夫か?」
「平気、気を付けて行ってきてね」
「あぁ、すぐ戻って来る」
後ろを向いたままヒラヒラと手を振りながら部屋から出て行った琉聖。その背中を見ながらさっきの事を思い出す。
梓とあの子の事。
自分のしつこさにも、懲りない所にも正直こりごりしている。
それなのにコントロールの効かない感情が鬱陶しくて仕方なかった。