Silver Night-シルバーナイト-
あっという間に引越しの日はやってきて、ここ数日あまり眠れていないせいかうっすらとクマが出来ている。
朝早くから引越し業者が荷物を運び出す中、私は聖の用意してくれた迎えの車で間宮邸へと向かう。
何年ぶりだろうか…
馬鹿みたいにデカイお屋敷に、広大な庭園。
やはりその大きさには何度見ても慣れない。
「莉愛、おかえり」
私が到着したと知らせを受けたのか、屋敷に入ってすぐに聖が笑顔で私を迎え入れてくれた。
「うん」
聖はおかえりと言ってくれたけれど、何故かただいまと言う気持ちにはなれない。
ここにいい思い出はないから…
「おかえりなさいませ、莉愛様」
聖の周りには数人の使用人が頭を下げてから私に笑顔を向ける。
ほとんどが私の住んでいた時とは違う人ばかりだ。
それもそうか、ここに住んでいたのはもう何年も前の話だ。