冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
「急な通達にもかかわらず、王宮まで足を運んでいただきましたこと、感謝申し上げます。私は王太子殿下の近侍兼、執務補佐官を務めておりますレドリー・バルフォアと申します。この度、王太子殿下のお妃選考においても補佐を務めさせていただきます」
「……それより、王太子様はどちらに?」
ミラベルが不満そうな声を上げる。
「殿下は政務がお忙しく……もうまもなく見えられる予定です。しばらくお待ちくだーー」
ちょうどその時、横壁の扉がバタンと開き、レドリーの言葉は中断された。
そこから姿を現したのは、一瞬で人目を惹く白銀の髪と涼しげな水色の瞳を持つ、二十代半ばほどの若い男性だった。身にまとう金糸刺繍の映える上質な濃紺の上衣にはいくつもの勲章がきらめき、かなり高い地位に身を置く人物であることは一目瞭然だ。令嬢たちの視線がその若者に一気に集中する。
彼は、フィラーナたちを一瞥すると、堂々とした足取りでレドリーの近くへ歩を進めた。長身で、衣服の上からでもわかる無駄のない引き締まった体格。端正な顔立ちの気品漂う美男子だが、その表情は固く、全身から近寄り難い雰囲気を醸し出している。その後ろには、王宮近衛騎士団の黒い騎士服を着た若者が三人ほど、付き従っていた。
レドリーは安堵の表情を浮かべると恭しく一礼し、胸に手を当てたまま大理石の床に片膝をついた。それが王族に対しての臣下の礼であり、この場に現れる王族はただひとり、王太子に他ならない。
王太子は王宮主催の夜会などにもめったに姿を現さないことから、今回の令嬢の誰ひとりとしてその姿を見た者はいなかった。だが、ミラベルはいち早く男の正体を察知すると静かにドレスを摘まんで膝を折り、深く頭を垂れる。緊張をはらんだ空気の波は瞬時に周囲に伝わり、他の令嬢も次々とミラベルの所作に続いた。
「……それより、王太子様はどちらに?」
ミラベルが不満そうな声を上げる。
「殿下は政務がお忙しく……もうまもなく見えられる予定です。しばらくお待ちくだーー」
ちょうどその時、横壁の扉がバタンと開き、レドリーの言葉は中断された。
そこから姿を現したのは、一瞬で人目を惹く白銀の髪と涼しげな水色の瞳を持つ、二十代半ばほどの若い男性だった。身にまとう金糸刺繍の映える上質な濃紺の上衣にはいくつもの勲章がきらめき、かなり高い地位に身を置く人物であることは一目瞭然だ。令嬢たちの視線がその若者に一気に集中する。
彼は、フィラーナたちを一瞥すると、堂々とした足取りでレドリーの近くへ歩を進めた。長身で、衣服の上からでもわかる無駄のない引き締まった体格。端正な顔立ちの気品漂う美男子だが、その表情は固く、全身から近寄り難い雰囲気を醸し出している。その後ろには、王宮近衛騎士団の黒い騎士服を着た若者が三人ほど、付き従っていた。
レドリーは安堵の表情を浮かべると恭しく一礼し、胸に手を当てたまま大理石の床に片膝をついた。それが王族に対しての臣下の礼であり、この場に現れる王族はただひとり、王太子に他ならない。
王太子は王宮主催の夜会などにもめったに姿を現さないことから、今回の令嬢の誰ひとりとしてその姿を見た者はいなかった。だが、ミラベルはいち早く男の正体を察知すると静かにドレスを摘まんで膝を折り、深く頭を垂れる。緊張をはらんだ空気の波は瞬時に周囲に伝わり、他の令嬢も次々とミラベルの所作に続いた。