冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
 そして、ウォルフレッドと誕生が数ヶ月しか違わない弟のテレンスは夜会にもいつも出席し、常に笑顔で人当たりも良い。その微笑みひとつで年頃の娘の心臓を鷲掴みにするほどの美貌の持ち主で、恋多き男として有名なのだという。ウォルフレッドとは正反対だ。

(恋多き、って……ただの女たらしじゃないの)

 フィラーナは思わずげんなりしたが、容姿が優れている上に確固たる地位もあるので、うら若き乙女たちにとっては高嶺の花、見ているだけでうっとりするような憧れの的なのだろう。

 そのあともいろいろと話題は代わり、親睦会と銘打ってお茶会は和気あいあいと進んだ。しかし、実際のところは互いの現状をさりげなく確認し、抜け駆けしないか牽制し合あっているようにも見受けられる。

 そういう空気に居心地の悪さを感じたフィラーナだが、ここでは彼女たちのそうした言動こそ普通なのであり、妃選びから外れたいと考えている自分の方がむしろ異質な存在なのだと、改めて気づかされた。

 おとなしそうなルイーズもあまり話には乗れていない様子だったので、たまたま横の席だったフィラーナが別の話題ーー家族や故郷の話を振ってみると、ルイーズはホッとしたような笑みを浮かべた。いつの間にか、ミラベルを含んだ六人と、フィラーナたちふたり、という構図が出来上がっていたが、誰ひとり気にかける者はなく、お茶会はお開きとなった。
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