冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
 事件の翌日から、ルイーズはフィラーナのことを気にかけ、毎日のように部屋を訪ねては様子を見にきてくれていた。そんな優しい心遣いにフィラーナも嬉しくなり、今では気軽に名前を呼び合えるほどの仲に進展している。

「でも油断しない方がいいわ。フィラーナのこと、最大のライバルだと思って嫉妬に燃えてる人は、次にどんな手でくるかわからないから」

 ルイーズはカップを置き、少し前のめりになると声をひそめた。彼女の指し示す人物が、ミラベルだということはフィラーナにも察しがついている。一昨日、廊下でミラベルとすれ違った際、敵意剥き出しの眼差しを向けられたからだ。ある意味清々しいほどわかりやすい彼女の自己顕示欲と女王様気質には辟易したが、証拠がないので下手に追及することもできない。

「そう言えばルイーズ、前から気になってたんだけど……ミラベルさんとは良く知った仲なの?」

 ルイーズの頬が微かにピクリと動いたのを見て、フィラーナが「ごめんなさい、言いたくなかったらいいんだけど」と申し訳なさそうに付け加えると、ルイーズは苦笑いしながら首を横に振った。

「いいのよ。そうね……そんなに仲がいいわけじゃないけど、小さい頃から知ってるわ。親同士が知り合いで、よく昼間のお茶会なんかの集まりにミラベルのお屋敷に招かれたの」

 ルイーズは少し遠い目をして静かに言葉を続ける。
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