冷徹皇太子の溺愛からは逃げられない
「うちは貧乏男爵家で私自身も地味で冴えないけど、ミラベルの家は大金持ちで本人も美人で明るくて、いつも皆の中心にいたわ。だから、今回も自分こそがお妃に選ばれるべきだ、って意気込んでたのよ。まさか、自分より美人なフィラーナがやって来るなんて、思ってもみなかったんじゃないかしら」

「えっ、私なんて垢抜けてないただの田舎娘よ?」

「フィラーナは自分の魅力に気づいていないのね。あなたは着飾らなくても内面から輝きが溢れてるわ。……実は私、ミラベルよりも……いいえ、他のどの令嬢よりもフィラーナが王太子妃に相応しい、って思ってるもの」

 ルイーズは瞳に優しい色を宿して微笑む。フィラーナからすれば、お淑やかで奥ゆかしくて落ち着いた雰囲気を持つルイーズの方が王太子妃に相応しいのでは、と思ってしまう。

「私はルイーズみたいな大人の女性に憧れるわ。同い年とは思えないくらい……って私が子供すぎるのね」

 そこでふと沸いた疑問を、フィラーナは口にした。

「ねえ、ルイーズはどうして私に王太子妃の座をすすめるの? 言ってみれば、ここにいるのは皆ライバルでしょう? ルイーズもお妃に選ばれることが目標じゃないの?」
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