困難な初恋
「お邪魔します」

そう言って靴を脱ぐ。

秋葉の家は、会社から路線を乗り換えて、
少し駅から歩いたところにあった。
一人暮らし用の1LDK。玄関を入った瞬間、甘い香りが鼻をくすぐる。

どうぞ、という秋葉に続き部屋に入る。
秋葉の部屋は、シンプルでモノトーンな、
まさに秋葉らしい、部屋だった。

お茶を飲み、時間が時間だったので、順番にシャワーを浴びる。
まだ、一緒には入ってくれないか・・・

上がってくると、部屋着が用意してあった。
ん。これは、男物・・・?

我慢出来ず秋葉に尋ねる。
「これって・・・男物、だよね?」


そうだよ、と振り返りながら言う。純ちゃんと同じ施設の子で、たまに二人でうちに泊まることもあるから。

同じ施設の子・・・男・・・

なんか聞いたことあるぞ。まさか・・・

「その子も、小学校の同級生だったり、する?」

その質問で、秋葉も気付いたようだ。
「あぁ、純ちゃんから聞いて知ってるんだよね。
そう、私が初めてゲームに引っかかった相手だよ」

少し意地悪く笑う秋葉の前で、その服を脱ぎ棄てたくなる衝動を押えた。

「もしかして、ちょっと意地悪してる?」

自意識過剰かもしれないが、恥ずかしい気持ちを抑えて聞いてみる。
すると、
そうだよ。
真っ直ぐこちらを見る目と目があった。

「仕返し、してる。
我慢出来なくなったら、遠慮なく言ってね」

そうだった。秋葉は決して優しい天使じゃない。
自分ルールを持った奴だった。
どんな仕返しか、少し緊張するが。
ゴクリと、またツバを飲み込んだ。
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