【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
「今日、アメリカから新しく部長が来るらしいです」

「ああ、前の部長の代わりに?」

前の部長は家庭の事情で急遽退社することになり、ここ数週間、部長のポジションが空いたままになっていた。

「そうです。すごくやり手だとか、イケメンだとか、いろいろ噂がありますけどね」

ああ、それでか。
この女子社員たちの浮き足立った雰囲気の理由がわかり、私は苦笑した。

「相変わらず沙耶さんは興味なさそうですね……」

少し不満そうに満ちゃんが言いながら、キョロキョロと周りを見渡す。

「だって、イケメンでも仕事するだけなんだから、私には関係ないでしょ」

「そりゃあ、そうですけど……」

まだ納得がいかない様子の満ちゃんに、私は軽く笑いかけた。

「噂だけでしょ? どうするの? 部長よ。もしかしたら50歳くらいのイケメンかもしれないわよ。それでもいいの?」

「えー、ちょっとそれは……年上すぎるというか……」

「でしょ? 本人が来るまでは分からないんだから、ほら、早く仕事するわよ」

「はーい……」

私の言葉に、満ちゃんは少し肩を落としながらも諦めたように返事をし、そのまま自分の仕事を始めた。
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