【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
そう言って私は寝室に逃げ込むと、クローゼットから予備の毛布と枕を出し、ソファーに投げ込んだ。
「ありがとう。なあ、明日は俺に時間頂戴」
「え?」
どういう意味?
聞き返した私に、部長は優しく微笑んだ。
「明日、予定ないだろ?」
「え?えっと……」
すぐに言わなかったことで、予定がない事はまるわかりだったのだろう。
「いいよ。とりあえず明日な。沙耶、おやすみ」
最後の最後に、ずっと羽田だったのに、沙耶と呼ぶ部長は本当にずるい。
こんなに昔はずるくも、イジワルでもなかった。
それすら今の私にとって、惹かれてしまう理由になっていることをこの人は知らないのだろう。