【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら

「料理できたんですね……」

「いや、目玉焼きがこうなった」
そう言いながら笑う部長は、言葉をつづけた。

「俺も少しは上達しただろ?ポイント上がった?」
その言葉に、どう答えるのが正解かわからなかったが、私はパチンと手を合わせると、

「あがりました。あがりました。いただきます」
抑揚なく言って、箸を取った。

「あー、そのどうでもよさそうな対応傷つく……」
そんな事をブツブツ言いながらも、部長も箸を持った。

「おいしいですよ」
意外にもと言っては失礼だが、本当にふんわりとできていたスクランブルエッグに感心して私は部長をみた。

「やるじゃん、俺」
少し照れたように部長は言うと、私の髪をぐちゃぐちゃとした。

「もう!」
ぐちゃぐちゃにされた頭を直しながら、私はコーヒーに手を伸ばした。

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