【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
「ありがとうございます。すごく、すごく惹かれる提案なんですけど……ずっと昔から私はあの人以外ダメみたいで……」
悲しく笑った私に、水田先輩も小さくため息をついた。
「本当に不器用だな。うまくやればいいのに……。でもそれが羽田さんのいい所かな」
そう言って、しばらく言葉を止めた後、水田先輩はポンと私の頭を叩いた。
「よし、じゃああそこだ」
そう言って指をさしたのは、どこにでもあるチェーン店のファミレスだった。
「ただの上司と部下の俺たちはあそこで十分だよな。もちろん酒もなしで」
本来ならここで帰ってもいいはずだったが、その水田先輩に優しさに涙が溢れそうになる。
明日から私が気にしないように、笑顔でそう言ってくれる水田先輩を好きになれれば幸せなんだろう。
ふたりでファミレスに行き、仕事の話や同僚の話、私がこれからやりにくくないようにと気を使ってくれる、先輩に心から感謝した。