【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら

「沙耶さん?大丈夫ですか?」
そんな私に驚いたように、満ちゃんは私を見た。

「……大丈夫。ごめん。ありがとう」
その甘々なんてことは、口がさけても言える訳もなく、私は小さく息を吐いた。

その間にも、総務や、経理の女の子たちが部長の部屋へと入って行く。

「なんか、部長に変わってからやたらと女子社員がわざわざ書類持ってきますよね。前なんてほとんど社内便まかせだったのに」
満ちゃんは部長室に目線を向けながら、ブツブツと独り言のように言っていた。

その言葉にきちんと仕事は仕事と割り切っているが、どうしても他の女の子たちの視線に嫉妬してしまいそうになる自分にため息をつく。

満ちゃんはもちろん、相変わらず社内で部長の人気はすごい。
女子社員の集まるところでは、必ずと言っていいほど部長の話題をよく耳にするし、部長が現れると女子社員の視線がそこへ向くのが嫌でもわかってしまう。

昔から人気はあったが、今は大人の魅力とスペックが加わり、あの頃と比べ物にもならないほどな気がする。

「資料室いってくるね」
咳が落ち着いて、こんなことを考えてしまった自分を叱咤して、気分を変えるためにも資料を探しに行くために席をたった。


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