【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
それに、私の両親は何も言うわけないが、天下の佐伯グループが私を認めてくれるのかという、その問題はまだ残っている。
小さくため息をついて、雪の降りそうな空を見上げた。
「羽田沙耶さんですか?」
静かに響いた声に驚いて、私はその声の主を見た。
「あの、どちらさまですか?」
驚いて聞き返した私に、50代後半ぐらいに見えるその男性はおもむろに名刺を差し出した。
佐伯グループ
世話役 小野上 誠司
佐伯グループという文字に、ドキンと心臓が音を立てた。
「どのようなご用件でしょうか」
弱みを見せる訳にはいかないような気がして、私はグッと震えそうになるのを押し殺すと、その人を見据えた。
「急なお願いで大変恐縮ですが、一緒に来ていただきます」
低姿勢なようで、有無を言わせないそのセリフに少しの苛立ちを感じつつ、ここで行くのが私と優悟君にとっていい事なのかを考える。