【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら

「どのような件でしょうか?優悟さんはこの件をご存知ですか?」
会社の前でこんな話をしているのも、まずい気はしたが、どんな要件かもわからずついていくわけにもいかない。

「十和子様がお呼びです」
「とわこさま?」
初めて聞く名前だったが、すぐに誰だかわかったような気がした。

「それは優悟さんのお母様ですか?」

「そうです」
静かに顔色一つ変えないで小野上さんは答えると、道路わきにとまった真っ黒の高級車に目線を向けた。

私は覚悟を決めてあたりを見渡し、知り合いがいない事を確認すると小野上さんについて歩きだした。

お母様にきちんとご挨拶……。そういう感じではないのよね。

優悟君のいないところで呼び出されるという、この現実に私は今までとは全く違う世界にようやく気付いた気がした。
< 198 / 287 >

この作品をシェア

pagetop