【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
「贅沢だよねー。昔は当たり前だったこの景色」
東京にいって海が無いことに、慣れるのにしばらくかかったのを思い出した。
「じゃあ、戻ってくればいいじゃない。いつでも見放題よ」
母の意外な言葉に、私はガバッと起き上がった。
帰ってきてほしいのだろうか?そんな事を思った私に、母は少し笑いながら私を見た。
「だって、沙耶もう26でしょ?そろそろ身を固める年なのに、相変わらずそういうお相手はいないんでしょ?」
ずっと結婚も、恋愛もしないと話していた私は、母もそう思っていることに気づき慌てて言葉を発した。
「そのことなんだけどね」
そう言いかけた私に、お母さんは爆弾発言をした。
「酒屋の大知君なんてどう?」
「え?大ちゃん?さっき会ったけど……」
そう答えた私に、お母さんは嬉しそうに声を上げた。