【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら

「だから!私は彼しか好きじゃないの!」

「失礼します」
バンと机をたたいて立ち上がったのと同時に、縁側の向こうから聞こえた声に私は動きを止めた。

「このような場所から失礼します。何度か呼び鈴をおしたんですが……」
まぎれもなくその場に立っていたのは、スーツに身を包んだ優悟君だった。

「どうして……」
机に手をついたまま振り返った私を見て、優悟君は優しく微笑んだ。

そしてお父さんとお母さんを見ると、深く頭を下げた。

「佐伯優悟と申します。ご挨拶と、5年前のお詫びが遅くなり誠に申し訳ありません」
そう言ったまま頭を下げ続ける優悟君に、私は慌てて駆け寄る。

「優悟君!やめて」
そう言っても頭を上げない優悟君に、私は両親を見た。
真剣な瞳で優悟君を見るお父さんの瞳に、絶望が広がる。
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