【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
勘違いなんて、するはずないでしょ?

負けないんだから。

自分に言い聞かせるように心の中で唱えながら、ギュッと唇を噛みしめ、拳を強く握る。

そんな私を一瞥し、「じゃあ、待ってろ」
それだけ言い残して、佐伯部長は自分の部屋へと行ってしまった。

――なんで、こうなるのよ……。

頭はズキズキと痛むし、目の前の人は私の感情をぐちゃぐちゃにかき乱すし……。

「ほら、飲め」

ふいに目の前に差し出された鎮痛剤と水。昔から私が常備しているものだった。
俯いていた私は、反射的に隣の人を見上げる。

「頭、痛いんだろ? また」

――また?

今の言葉を、頭の中で反芻する。昔から、テストのときや無理をしたときに、決まって頭痛を起こしていた。
でも、そんなこと……覚えてるの?

その事実に胸が締めつけられ、思わず泣きたくなる。
――ちょっと待って、なんで泣きたくなるのよ!

自分にツッコミを入れながら、そっと目の前の水に手を伸ばした。

「すみません。ありがとうございます」
それだけ言って、薬を静かに胃の中へと流し込んだ。
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