【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
家に着くと、俺は沙耶を前に土下座をする。

「本当にごめん!いきなり帰って驚かそう思ったら、沙耶がいない上に水田が現れたから……」
そんな俺をじっと沙耶は見ているようだった。
そして上から小さなため息が聞こえ、絶望的な気持ちが広がる。

「顔上げて」

沙耶の言葉に俺は少しだけ顔をあげると、沙耶を見た。

にこりと笑っている沙耶に驚いて姿勢を戻した。

「早く帰ってきてくれて本当に嬉しい。知ってたらちゃんと待ってたのに。でももう少し私を信じて」
そう言って正座をしている俺めがけて、沙耶はぎゅっとクビにしがみつく。

「お帰り」
沙耶の体温に俺はホッと息を吐いて沙耶を抱きしめる。
「ただいま」

そしてゆっくりと沙耶の顔をみて、頬に触れる。

「早くこうしたかった」
それを言った俺に、沙耶は軽く俺を睨むと、「自分のせいでしょ?」と言わんばかりの表情をしていた。

「もう怒らないで。沙耶に早く会いたかっただけだから」

「わかった」
そう言ってくれた沙耶をもう一度抱きしめる。

沙耶がいない人生なんてもう考えられない俺は、相当重症だと思う。

でも、ようやく手に入れた沙耶を俺はもう二度と離さない、そう心に決めた夜だった。
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