【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
それでも起こさずにいてくれる。
沙耶は昔からそういう女性だ。
俺の中の予定では、近場でもデートらしいことをしたいと思っていたのに、もうこんな時間だ。
少しだけ重たい身体を起こすと、俺は急いで寝室を出た。
平日ならばキッチンに立っている沙耶の姿はなく、「あれ?」と思いながらリビングを見渡しても、沙耶は見当たらない。
出かけると伝えてあったのに、起きない俺にしびれを切らして先に出かけた?
そんなことがちらりと頭をよぎるが、そんなわけがないとすぐに思い直す。
「おはよう。起きた?」
そんな俺に、やわらかな声が後ろから聞こえた。
「沙耶!」
少しだけ声が弾んだ自分に、どれだけ沙耶が好きなんだよ、と思う。
振り返れば、洗濯物のカゴを持った沙耶が笑顔で立っていた。
つい零れた「ごめん、起きれなかった」。
そっと頬に口づけようとすると、洗濯物のカゴを持ったまま、沙耶から唇にキスをされる。
その不意打ちに、俺は動きを止めてしまっていたのだろう。
少し勝ち誇ったような沙耶の表情に苦笑する。
本当に、どうしてこうも可愛いんだろう。