【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
こんなところを見られたら――。
そう思って周りを気にしたが、遅い時間ということもあり、誰の視線を感じることもなく地下の駐車場までたどり着いた。
目の前に停められたのは、見たこともない高級車。
真っ黒な車体に、輝くエンブレム。助手席のドアが静かに開けられ、無言のまま乗るように促される。
その洗練された仕草と、車の持つ圧倒的な高級感に、あの頃とは違うという現実を嫌でも突きつけられた。
――あの頃、移動といえば、免許を取ったばかりの彼が運転するレンタカーだったのに。
「どうした? いい加減、諦めて乗れよ?」
黙ったまま立ち尽くしていた私を、車に乗るのを渋っているのだと勘違いしたのか、佐伯部長が少し怪訝そうな顔を向ける。
「違いますよ。ただ……大人になったんだなって、思っただけです」
小さくそう呟きながら助手席に乗り込むと、これまで乗ったことのない、包み込まれるようなシートの感触に、思わず息を吐き、身体を深く沈めた。
そう思って周りを気にしたが、遅い時間ということもあり、誰の視線を感じることもなく地下の駐車場までたどり着いた。
目の前に停められたのは、見たこともない高級車。
真っ黒な車体に、輝くエンブレム。助手席のドアが静かに開けられ、無言のまま乗るように促される。
その洗練された仕草と、車の持つ圧倒的な高級感に、あの頃とは違うという現実を嫌でも突きつけられた。
――あの頃、移動といえば、免許を取ったばかりの彼が運転するレンタカーだったのに。
「どうした? いい加減、諦めて乗れよ?」
黙ったまま立ち尽くしていた私を、車に乗るのを渋っているのだと勘違いしたのか、佐伯部長が少し怪訝そうな顔を向ける。
「違いますよ。ただ……大人になったんだなって、思っただけです」
小さくそう呟きながら助手席に乗り込むと、これまで乗ったことのない、包み込まれるようなシートの感触に、思わず息を吐き、身体を深く沈めた。