【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
温かさと優しさに包まれるような、不思議な心地よさの中で、私はゆっくりと目を開けた。

――しまった!

その感覚も一瞬で吹き飛び、置かれている状況を思い出した瞬間、慌てて身体を起こす。

その拍子に、胸元まで掛けられていたジャケットが滑り落ちそうになり、とっさに抱き寄せた。

あ……。

ふわりと漂う、懐かしい香り。
それが佐伯部長の香水だと気づいた途端、胸がキュッと締めつけられる。

シートは一番奥まで倒され、膝の上には彼のジャケット。
そして運転席では、佐伯部長が目を閉じていた。

眠っている横顔は、あの頃と何も変わらないように見える。
けれど――違う。

それを一番よく知っているのは、他でもない私自身だった。

どれくらいの時間、私はただ彼を見つめていたのだろう。

つい、髪に触れたくなり、無意識のうちに手を伸ばしかけ――ハッとして引っ込める。

――ここは、どこ?

車内にいることはわかる。だが、外は暗く、周囲の様子がまるでつかめない。

――なんで?

状況がよくわからず、私はごそごそとカバンの中を探り、スマホを取り出そうとした。

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