【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
ほとんど無言のまま車は進み、私のマンションに着いた頃には、すでに零時を回っていた。
どうやら、一時間以上も眠ってしまっていたらしい。

過去がどうであれ、私が彼をどう思っていようと、今日、迷惑をかけたのは事実。
それぐらいの常識は、私にもある。

どれだけ嫌いな相手でも、お礼くらいは言わなければ――。

鞄を手に持ち、ドアノブに手をかける。
一度、静かに息を整えた。

「今日は本当に申し訳ありませんでした。そして……ありがとう……ございます」

そこまで言った瞬間、気まずい空気に耐えきれず、私は逃げるようにドアノブを引いた。

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