【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
「部長って、大切な人がいるんですって」
その言葉に、私はドクンと胸が音を立てた。
「え?そうなの。というか当たり前だよねーあんなにハイスペックなんだもん。彼女ぐらいいるよねー」
友里が当たり前かと言って、ハイボールに手を伸ばすのを私はぼんやりと見ていた。
彼女……いるんだ。
自分自身それがどうしたの?と思っているはずなのに、なぜか心にぽっかりと穴が開いたような気持になり、慌てて目の前のビールを流し込んだ。
苦みと、アルコールがすきっ腹に入り、カッっと体が熱くなるのを感じた。
それでもザワザワとした気持ちを消すことができず、どうしてこんな気持ちになるのわからず満ちゃんと友里の会話すら頭に入らない。