【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
「羽田さん、どうしたの?」
どうしてこの人はこんなにタイミングよくあらわれるのだろう……。
そんな事をぼんやりと思いながら、前から小走りで走って来る水田先輩をみた。
「泣いてた?また何かあった?」
心配そうに私を覗き込む水田先輩の優しさにすがりつきたくなる。
もういいのかな。これ以上傷を広げなくても。
ずるくても、なんでも甘えていいのかな。
そんな気さえしてくる。
いくら思ったところで、あの人と一緒にいればお互いを傷つけあうだけなのかもしれない。
そんな事を思って水田先輩を見上げて、何かを話さないといけないと、言葉を選ぶ。
「えっと。なんていうか……」
結局どう説明していいのかも、今の私の気持ちをつたえる術がわからなかった。
「羽田さん……もう泣かないで」
そう言うと、水田先輩が私に手を伸ばすのがわかった。
やっぱりダメ……!
そう思った時だった。
後ろから力ずよく抱きすくめられ、視界が暗くなった。