【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら

「水田……悪い」
すぐにわかってしまう、"その声”と"香り”に包まれて、私は何がなんだか分からない。

「ずるいですよ……部長」
水田先輩がどんな表情でその言葉を言ったかは解らない。

「まだ、終わってない」
部長の静かな声に、水田先輩が少し笑った気がした。

「わかりました。じゃあきちんと終わらせてください」

『終わらせてください』

その言葉に部長は返事をすることなく、私を抱きしめる腕に力を込めた。

「お疲れ様です」
その言葉と同時に、水田先輩の足音が遠ざかるのがわかった。

私は遮っていた部長の手をゆっくりと自分の手で避けると、チラリと部長をみた。

「どうして?」

その問いにも答えることなく、部長はただ私の手を引いて地下へと向かう。

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