【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
「わからない。なんでだろうな」
ハンドルに頭を乗せ、こちらを見る部長はどこか寂し気に見えた。
「一つだけ聞いていいか?」
その問いに、何を聞かれるか不安になるが、私は小さく頷いた。
「あの頃、あの時、本気で俺の事好きだったって本当か?」
今更この人は何を言ってるのだろう?
そして今私にその答えを言わせてどうするの?、そんな思いが心の中に沸き上がる。
「今更そんなことどうでもよくないですか?」
「それだけでいい。教えてくれ。頼む」
懇願するように言われて、私は小さくため息をついた。
「私を見ていてわからなかった?」
「わかってるつもりだったけど」
「けどなに?」
そこで部長は考えこむように、言葉を止めた。