【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
「他に男がいるっていう話があった」
なにそれ?
誰がそんな事をいったの?
啞然としていたのだろう、私は部長の顔を見つめた。
「誰がそんな事を……だからあの時自分も同じことをしたの?」
あの時の光景が頭をよぎって、また苦しくなる。
「あれは……」
特に否定も説明もしない部長に、苛立ちが募り私はこの人に彼女がいることを思い出した。
たとえあの時、なにかの誤解があったにせよ、信じあう事も、話し合う事もお互いしなかったのだから、もう遅すぎた話だ。
私は小さく首を振ると、部長を見つめた。
「じゃあ、少しは私の事好きだった?」
真っすぐに見つめて問いかけた私に、部長は目を見開いた。