【2025.番外編&全編再掲載】甘い罠に溺れたら
そして、ゆっくりと目を伏せたあと、そっと私の頬に触れた。
「大好きだったよ……」
ずっと引っかかっていた。あんなに優しくて、大切にされた時間を過ごしたのに、あの瞬間全部が信じられなくなった。
何度も私に好きだと言いながら、平気で噓をついて、複数の人を愛せるなんて。
そう思ってた。
でも違ったんだ……。
それだけで私には十分だった。
「あの時、あなたが全てって思えるぐらい好きだったよ。大好きだった。どういう理由で誤解をされたのかわわからないけど、信じてもらえなかったのは今も少し悲しいけど、ようやくただ遊ばれていたわけじゃないってわかってよかった。ありがとう。これできっぱりと前に進める」
きちんと微笑むことができただろうか?
最後ぐらい笑顔でお別れしたい。
今、彼には大切な人がいるのだから。